【取材日記】脱サラの嚴さんが人生賭ける 高級食パン専門店「十八番麦蔵」がオープン

令和元年12月14日、東京・練馬区の大泉学園に高級食パン専門店「十八番麦蔵」(おはこむぎぞう)がオープン、前日開催された内覧会に参加してきた。

新しい店の代表を務めるのは2人の娘を持つ、ごく普通のサラリーマンだった「嚴さん」54歳だ。脱サラをして独立開業という長年の夢を叶え、今まさに人生の花道を1歩踏み出した。

「花道に主役がついに登場!」という思いをこめてつけられた店名が、「十八番麦蔵」なのである。

人生の花道だけに花柄のガウンを着て見栄を切る嚴さん(左)と
負けない派手さのベーカリープロデューサーの岸本氏(右)

嚴さんは山口県で焼き肉店を営む両親のもとで育ち、いつか自分も独立開業したいという夢を胸に秘めつつ、サラリーマンとして医療機関で企業健診に携わる生活を送っていたという。

そんなある日、テレビでベーカリープロデューサーの岸本拓也氏を知る。そして、偶然にも友人の紹介で岸本氏と出会うこととなったのだ。

岸本氏は和文化WEBマガジン「ハッケン!ジャパン」でも紹介した「題名のないパン屋」や、「考えたひとすごいわ」など異業種オーナーのベーカリーを次々とプロデュース、ヒットさせてきた敏腕プロデューサーだ。

嚴さんは岸本氏のプロデュースしたパンのおいしさに感銘を受け、自身もパン屋としての独立開業を決意する。

親戚からは脱サラに反対されたが、「好きなことをやったほうがいい」という奥様の後押しで決意を固めることができたという。
(来年高校受験の娘さんがいるというのに、なんて素晴らしい奥様!)

焼きたてのパンがどんどん出てくる。見ているだけで幸せな気分♡

企業健診に携わった20年間、「食」の大切さを痛感していた嚴さんは「おいしくて体にいい、安全なパンを作りたい」という志を持つに至った。

ネーミングや店舗の見た目は派手だが、パンはシンプルに質の良い材料だけで作られたもの。主な原材料は、きめ細やかな小麦粉に国産のバターやフレッシュクリーム、こだわりの海水塩など。

秘伝の製法でつくられた生地はたっぷりと水分を含み、丸めて型に入れる工程ではつきたての餅のように柔らかだ。

焼き立てパンの試食では「飲めるね!コレ!もはや飲み物だね!」と声を上げる人も。たしかに、ふわふわというより、もはやプルプルに近い、驚きの食感だ。

パンの耳は薄く、バターロールと大差ない。これなら「子供が食パンの耳を残す」という悩みとおさらばできるに違いない。噛む力や飲み込む力が弱くなっているお年寄りにも喜ばれそうだ。

左から「これぞ花道」(980円)、「玄しゃり麦蔵」(860円)
「十八番」(800円)※すべて税抜き

店頭に並ぶパンは3種類。プレーン「十八番」、玄米入り「玄しゃり麦蔵」、サンマスカットレーズン入り「これぞ花道」。

「十八番」はほんのりと甘く、分厚く切ってトーストすると外はカリカリ中はふわふわ。焼きたてのプルプル感がよみがえる。

「これぞ花道」にはいわゆる普通のレーズンではなく、大粒で甘酸っぱいサンマスカットレーズンを使用。ほんのり甘い生地に酸味が引き立っておいしい。

「玄しゃり麦蔵」は香ばしい玄米がたっぷり練りこまれており、トーストするとより香ばしさが引き立つ。

手でちぎれるほどの耳の薄さ。水分をたっぷり含んだパンは
しっとりとしていて、食べると口の中ですっと消えていく

朝10時のオープン時に焼きあがっているのはプレーンのみ。

「これぞ花道」「玄しゃり麦蔵」は1日20本の限定発売で開店時刻から整理券を配布。焼きあがったら整理券と引き換えに手に入れることができる。

商品のサイズはすべて2斤。2日で食べきれない場合は、スライスして1枚ずつラップに包み、冷凍保存用袋に入れて空気を抜いて冷凍するとよいそう。予熱したオーブントースターに凍ったままのパンを入れ、表面が少しこんがりするくらい焼けばおいしく食べられる。

脱サラの嚴さんが人生賭けて始めた「十八番麦蔵」。近くに行かれた際は、ためしに一本買ってみてほしい。ただし売り切れ次第終了となるので時間はお早めに!

 

高級食パン専門店「十八番麦蔵」
https://ohakomugizou.com/

 

(取材・原稿/Goodnews豊田敬子)